研究概要 |
治療効果は比例ハザードに従って生存率を高めるものとする。均一な症例では「層別により層の数が増える(層内の標本数が減る)ほど検出力が低下する」という現象を数学的に証明した。次に、症例は不均一であるがバランスが取れている時でも、予後因子を無視した治療効果の差の検定を行うと、検出力は均一症例の時より低下することを数学的に証明した。次に、ガン集学的治療研究財団特1研究の集積データに、ステージ、ボールマン分類、年令等の因子とそれらの交互作用を共変量とするCoxモデルをあてはめ詳細な分析を行った結果、全症例の対数ハザードレンヂは5であること、及び1つの予後因子における層間の対数ハザードレンヂは高々3程度と推定された。一方生存率を50%から60%にあげる薬効の対数ハザードは0.305である。従って薬効の既知背景因子全体の効果に対する相対的な大きさはe^<0.305>/e^5<0.01しかなく、薬効検出の困難さの一因が症例の不均一性にあることを示している。これらの結果に基づき、実際の臨床試験において治療効果をログランク法で検定した場合の検出力を、シミュレーションにより推定した。パラメターの値は標本数は1群200づつの計400で、死亡例数は320とし、検出力は2000回の繰り返し計算により求めた。まず症例が2通りあり、それらのハザードの違いが対数尺度上で0.5,1,2,の3通りを調べた。単純ログランク検定の検出力は76.7,66.8,36.5と低下している。この結果は不均一な症例に対して単純ログランク検定を用いるべきでないことを示している.次に、全症例での対数ハザードレンヂは5とし、0.025刻みで異なるハザードの症例が存在したとして、層別ログランク検定の検出力を求めた。層内対数ハザードレンヂが1.5を越えるとき,または層内標本数が8例以下の時は検出力低下が著しい。以上の結果、症例に不均一の程度が大きい時は、(層別)ログランク検定の検出力低下は避けがたいことが実証された。
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