研究概要 |
地震が空間的にのみならず時間的に群れをなして起こり易いという,地震発生の続発性(クラスター性)を総合的に調べた。地震に群れを気象庁の地震カタログからいくつかの客観的な方法によって抽出し,クラスターの統計的特徴の違いを前震,群発地震および余震間で比べた。これに基づいて,ある地域で連発の地震が起きたときその発生時刻・位置・マグニチュード差に関する情報を使うことによって,群れの型(特に前震型)をできるだけ有効に確率予測するような統計モデルを考えた。これにより,推定に使ったデータとは異なる新しいデータに対して確率予測を行うと,おおよそ一%〜十数%の変動が見られた。この確率予測の有効性はエントロピーの比較や分割表のAIC比較によって示すことができた。 さらに,最初の地震が起きた時点でも,それが前震である確率を予測することができる。気象庁地震カタログ(M4以上)によると相対頻度は4%弱であるが,単発の地震が前震である地域性の確率(震央位置の関数)がベイズ型平滑法によって推定され,この条件付確率は1.4〜10%の変動がある。推定に使ったデータとは異なる新しいデータに対して予測の有効性が同様の意味で示された。 連発の地震に関しては以上の2つの条件つき確率を組み合わせれば更に有効な確率予測になっていることが確かめられた。 この他に,震源精度が十分改良されている最近の気象庁地震カタログから30例の余震データを抽出して,余震の統計的経験則から導かれたフラクタル次元D,改良大森公式およびETASモデルのp値,マグニチュード頻度分布のパラメタb値などの時間・空間・マグニチュードに関する諸特徴パラメータ間の相関の有無を調べ,余震活動に関する一定の知見を得た。
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