並列計算機上で数値計算を効率良く実行するための手法について研究した。重要な点は、並列度が高くなった場合に並列化効率が下がらないことであり、これをスケーラビリティと呼ぶ。大規模な数値計算では、多くの場合反復法が用いられるので、見かけの並列度が高くても、収束が遅くなっては目的の解が得られるための時間は減少しない。そのため、本研究では偏微分方程式とくに拡散方程式をとりあげ、スケーラブルなアルゴリズムの可能性を追求した。 MGCG(マルチグリッド前処理つき共役傾斜法)は、矩形領域の熱伝導問題の差分法に対して有効であることをしめしたが、本研究では、非矩形領域の移流拡散問題の有限要素法から得られる方程式に対し、MG Bi-CGSTAB法を適応し、その有効性を実証した。更に、熱伝導率の極めて低い障壁で迷路のように区切られた領域の熱伝導問題にも有効であることを示した。これは、本手法が、かなりたちの悪い問題に対してもロバストであることを示唆し、パッケージ化するために極めて適していることを示している。
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