1.ATMスイッチが提供するデータリンク層マルチキャスト機能を、ネットワーク層であるIPマルチキャスト機能へどのようにマッピングできるかを検討した。これまでのIPマルチキャストは、イーサネットのようなバス型あるいは専用線のような2地点型データリンク技術の上に構築されており、本研究ではATM上での実装を試みた。また、ATMスイッチの多くは、独自のデータリンクマルチキャスト機能を持ちつつあり、データリンク層のマルチキャスト機能を活かすネットワーク層マルチキャストの設計を行なった。 2.設計した方法は、既存の方法と比較して、高いスケーラビリティ、障害に強い高い可用性、低遅延性、さらに自動設定可能な実用性を併せ持つものである。これらの特徴は、太田らの提案する小さなATMサブネットの仮定に基づいて、メンバーシップ管理を分散化させ、マルチキャストサーバを排除することで、集中ポイントを無くした結果である。さらに、勝部らの提案するセルスイッチル-タにマルチキャスト拡張を施こすことで、遅延を最小限に食い止められ、ATMの持つQoS保証機能が容易に利用できることを示した。 3.特にATMのコネクションのマルチキャスト配送木への対応方法やグループのメンバーシップ情報の取得方法を検討した。大規模なネットワークへ対応させるために、グループ管理と配送木の構成を行なうことで、パケット配送の最適化を行なうスケーラブルな性質を持ったネットワーク層のマルチキャスト制御プロトコルの開発を行なった。 4.実装は、現有のATMスイッチに、ATMアダプタボードを装着した現有のワークステーションを接続して行なった。プロトコルを実行する制御プログラムは、この現有ワークステーション上で開発し、この上で動作する。ローカルに接続実験を行ない、設計および実装の確からしさを実証しつつある。
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