研究概要 |
部分計算手法を用いた逐次型プロセスの並列化手法の研究と一貫として、本年度は並列プロセスの部分計算手法の基礎的研究のうち、主に並列プロセスの等価性に関する研究を進めた、すなわち本年度は、名前渡しを含む並列プロセスすなわちモ-バイルプロセスについて、その等価性の定義に対して二つの方向から考察を加えた.ひとつはπ計算によって記述されたモ-バイルプロセスの形式的意味を与える意味領域についての研究であり、もう一方はやはりπ計算によって記述されたモ-バイルプロセスの双模倣関係を用いた等価関係の定義についての研究である. 前者の方向においては、意味領域の定義に以下のような手法を用いた.すなわちプロセスの実行によって生ずる事象の集合を、生起の因果性を表わす半順序構造とプロセスの分岐構造を表わす入れ子になった二種類の括弧によって構造化した要素を意味領域の元として用いた.ここで与えられたπ計算のプロセスに対して,半順序と入れ子の括弧構造をもつ事象の集合に対する意味写像を定めることにより、この写像によって同じ意味領域上の元に対応するプロセスについて、それらは等しいと定義することにより、プロセスの等価性を定義することができる. 一方,双模倣性を用いた定義では、従来のπ計算の双模倣に基づく等価性の定義の欠点であるプレフィックス演算についての合同性の欠如を補うため、双模倣性の定義を拡張した. これらの結果によって、名前渡しを含む並列プロセスの部分計算手法の正当性の基礎となる概念が整理され、個々の部分計算手法が並列化に用いることが可能かどうかの半別手法についての見通しを得た.
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