本研究では、部分計算法を応用して逐次型プログラムを並列化し実行効率の向上させる手法を研究すると同時に、変換されたプログラムがもとの機能を保存して、なおかつ並列度が向上していることを理論的に保証するための基礎研究として、並行プロセスの非インターリーブ的な等価関係についての研究を行った. 逐次型プログラムの並列化手法については、先に発表した並行プロセスの部分計算手法の枠組みに基づき、いくつかの変換型部分計算手法が並列化に応用できることを確認した.また並列化の枠組みを具体的な言語に適用した例として、論理型プログラムの並列化手法について検討を行った.特に実際的なPrologのプログラムにおいて、ゴールや節の選択順序に依存してプログラムが正しく機能するような場合、ゴール節をそのまま並列に導出することによっては意図した解が得られない場合が存在する.そのようなプログラムを対象に、節の変換を行なうことによって、Prologで逐次に実行した場合と同様な結果を得られ、かつ並列に実行することが可能なプログラムに変換することが可能であることを示した. 一方、並行プロセスの非インターリーブ的な等価性については、主にπ計算の体系を中心に扱った.すなわちπ計算に対して、プロセスの実行中に起こる事象の前後関係を示す半順序構造とプロセス枝分かれ構造を同時に表現する構造を定義し、その領域DBSを構成した.さらに、π計算のサブセットからDBSへの意味写像を定義し、その意味写像によって構成される等価関係が合同関係であることを示した.また、DBSの構造をテスタープロセスとして採用することによってACPの試験等価性を拡張し、より抽象度の高い等価性を構成することが可能であることを示した.またDBSの構造が、並行論理型言語の意味論を構成する際にも有効であることが示された.
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