研究概要 |
(1)大規模な最適化問題に適用できるような新しい遺伝的アルゴリズムとして,ファーミングモデルと超並列モデルを開発し,それを効率よく実行するためのSIMD型並列コンピュータのアーキテクチャを開発した.さらにこれを構成する主要な要素をFPGAに実装することを前提に,ハードウエア記述言語VHDLを用いて設計した.ファーミングモデルでは多数の個体のグループが交配のために相互に直接個体を交換するのではなく,1台のマスタープロセスを介して,全体として最も優れた個体をすべてのグループに配る方法を用いる.このマスターと、個体のグループの組を単位として階層的に積み重ねることにより容易に超並列システムを構成することができる. (2)さらに高並列度を目指したのが超並列モデルである.このモデルでは各個体がそれぞれ自律的に動作して一斉に交配,突然変異,淘汰を行うもので,お互いにランダムに相手の個体を選び交差演算を行い子孫を生成する.この方式の収束性についてはシミュレーションによって確認することができた.このアルゴリズムをSIMD的に実行するには原則として1個の個体につき1個のプロセッサ要素を割り当て,これらが相互通信と遺伝子演算を行うことが必要である.このためにプロセッサ要素が任意のプロセッサ要素と直接通信できるような相互結合回路について研究し,高速ル-タを開発した. (3)SIMDマシンは構造が簡単なために多数のPEを1個のVLSIチップに集積することができるのが強力な利点であるが,プログラミングについては極めて融通性に欠けていることが知られており,このことがSIMDマシンの決定的な欠点とされている.特に遺伝アルゴリズムのような探索問題をプログラムすることは極めて困難である.これに対してMIMDマシンではSPMDとよばれる逐次プログラムと類似したプログラムが使用できる.しかし超並列システムの実現にはSIMDマシンの特長をぜひ利用したいところである.そこで我々はSIMDマシンの機能強化の方策を研究した結果,簡単な新しい分岐機構を導入することによって,SIMDマシンでもMIMDマシンと全く同様にSPMDプログラムを処理できることを見出した.
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