研究概要 |
研究計画に従い,超高速ネットワーク環境下におけるクラスタコンピューティングについて,ソフトウェアキャッシュシステムの実装実験と性能評価を行った.本研究の主な成果を以下に示す. 1.効率の良い共有メモリアクセスを実現するため,ネットワーク遅延を隠蔽するソフトウェアキャッシュ機構をサポートしたCached DSEの実装法を提示し,各種キャッシュコヒーレンスプロトコルに基づくソフトウェアキャッシュを実現した.ATM網はクラスタコンピューティングで重要なレイテンシに関する性能が不十分なことが判明したため,実装環境としてはMyrinet(640Mbps)とEthemet(10Mbps)の両方で接続されたSparcStation5(110MHz)クラスタを採用し,両ネットワークにおける効果を測定した. 2.メモリコンシステンシモデルとしては,Sequential Consistency(SC)モデルとRelease Consistency(RC)モデルについて実装実験を行った.また,RCモデルはコヒーレンス制御実行の時点が異なる2つのモデル,Eager Release ConsistencyモデルとLazy Release Consistencyモデルが提案されている.いずれのモデルにも無効化型プロトコルと更新型プロトコルが選択できるので,計6種類のコヒーレンスプロトコルについて実装した.その結果,Lazy Release Consistencyモデルの性能が最も良い結果となることを明らかにした. 3.Cached DSEの実装実験から,共有メモリへのリモートアクセスにおいてネットワーク遅延を隠蔽できることを確認した.また,アプリケーションによるベンチマーク評価では,従来のDSEに比べて大幅な高速化を達成できた。さらに,共有メモリアクセスを頻繁に行うため従来のDSEでは性能を引き出せなかったアプリケーションに対しても速度向上が図れ,Cached DSEの有効性を確認できた.
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