平成8年度は、次の点について研究をすすめ、成果を得た。 1.静的モード体系のプログラミング環境への応用-静的モード体系は、処理系の最適化ばかりでなく、プログラムの誤りの静的検出にも非常に有効である。そこで、モードづけできないプログラムの誤り解析のアルゴルズムを開発し、その実装を行なった。アルゴリズムは、プログラムから得られるモード制約集合から、充足不可能な極小部分集合を探索するという方法を基本としている。複数の誤りを一度の解析で検出することも可能である。プログラムの大きさと誤りの数とにほぼ比例する時間で、モード誤りの原因となっているプログラム中の記号ないしは記号出現を同定することができ、今後の強力な静的デバッグツールとなると期待される。 2.静的モード体系を利用した処理系の改善技法-並行論理型言語処理系において、配列処理や物理プロセッサ間通信などの諸処理が、モード情報を用いることによってどの程度最適化できるかを検討した。その結果、型やデータ参照数についての解析情報を併用することにより、ジェネリックオブジェクトと呼ばれる汎用のデータ構造の大幅な最適化ができることが判明した。その後、分散処理系におけるプロセッサ間通信プロトコルの最適化の検討に着手して現在に至っている。 3.並列処理系の整備-並列処理系の最適化の研究のプラットフォームと一つとして構築中の、パソコンクラスタ型の並列計算機について、その通信ライブラリの整備改良を行なった。VMEバスを通して分散共有されたメモリを通じた通信によって、良好なレイテンシ性能を達成することができたが、システムの動作安定性の点で課題を残しており、並行論理プログラミング言語処理系(KLIC)を移植する前に、その解決を図る必要がある。
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