本研究初年度にあたる平成7年度では、マルチグレイン並列処理のためのデータローカライゼーション手法に関する研究を行うと共に、コンパイラによる最適化機能を支援し低オーバーヘッドで効率の良い並列処理の実現を可能とするマルチプロセッサシステム開発用のアーキテクチャシミュレータの開発を開始した。 まず、データローカライゼーション手法に関する研究は、今後より重要となっていくと考えられる分散共有メモリ及びローカルメモリを持つマルチプロセッサシステムにおいて、ローカルメモリを効率良く使用しプロセッサ間データ転送オーバーヘッドの最小化を図ることを目的としている。このマルチグレイン並列処理のためのデータローカライゼーション手法の開発では、現在までの所、マクロタスクグラフ上で、単一のデータ依存エッジで接続された複数ループ間で、プロセッサ間データ転送を最小化しさらにローカルメモリの有効利用により処理の高速化を行なう理論的手法を開発している。この手法は、ループ整合分割とタスクグループ割り当て指定付きダイナミックスケジューリング手法と呼ぶ新たな技術を組み合わせたものであり、その有効性は比較的小規模なFORTRANプログラムに適用し性能評価を行なうことにより確かめられている。 また、マルチプロセッサアーキテクチャ開発用シミュレータの開発は、平成7年度補正予算で御補助のご連絡を戴きすぐに発注した開発用コンピュータシステムの納入が平成8年1月になってしまったため、そのマシン上で現在マシンクロックレベルで詳細な解析が可能なシミュレータを開発を行っている所である。このシミュレータは、データローカライゼーション、コンパイル時コードスケジューリングによる同期オーバーヘッドの最小化など高度なコンパイラ最適化を可能とするマルチプロセッサ開発に必要不可欠なもので、早急に開発したいと考えている。 以上の研究及び関連する研究成果は、8件の学会論文誌論文あるいは国際会議論文として発表するとともに、2件の学会誌論文として投稿中、1件の国際会議論文として掲載決定、海外出版図書の1章、情報処理ハンドブックの1章、1件の査読付きシンポジウム論文、1件の研究会論文、6件の全国大会論文として発表されている。
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