今年度の研究実績は以下の3点である。 1.既存の超並列計算モデルとの関係を踏まえた上で、発現的計算モデルの定式化を試みた。 2.超並列グラフリダクションにおける発現的な戦略獲得の過程を観察するツールとして、次の3つの構成要素から成る実時間可視化サブシステムを高性能グラフィクスワークステ-ヨン上に実現した。 (1)超並列計算機シュミュレータ:PVMを用いて超並列計算機システムをシミュレートする。 (2)エージェントエディタ:エージェントネットワークの初期設定を行なうとともに、個々の状態遷移規則を対話形式で作成・編集する。 (3)パターンインタープリタ:エージェント集団から発現するマクロな振舞いを実時間で可視化する。 3.開発したツールを用いた予備的実験として、発現的計算モデルに基づくマルチエージェントゲームのシミュレーションを行い、対戦ゲームにおける協調的戦略の発現を試みた。その結果、発現的計算モデルには偶然性が本質として根底にあるため、高位機能・戦略の発現を実験的に確認することは必ずしも容易ではないことがわかった。特に各種パラメータや初期状態の設定が極めてクリティカルである。発現的計算モデルの実験的研究には、マクロパターンの可視化だけでなく、各エージェントのミクロな行動追跡や、大量の実験データの統計処理が必要である。この点を踏まえて、ツールに改良を加える予定である。
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