本研究の目的は、高い機能・性能をもつ多戦略学習型知識システムを実現するための基本的な問題について考察を行い、その結果を、アミノ酸配列データからのタンパク質機能予測の問題に適用することである。 その基礎的なアイデアは次のとおりである。帰納的な学習手法をデータベース情報に適用し適切な仮説の候補を導出する。類推学習の機能を用いて仮説の候補を拡張する。演懌的な学習手法により仮説の検証を試みる。これは、合成問題でしばしば用いられる生成検査法における制御レベルに類推による学習手法を適用することになる。これによって合成型問題で扱う膨大な解空間の探索を効率化する。 本研究は、従来の知識システム技術の延長上に存在し、比較的少数の事例データと領域知識を使う、類推に基づく多戦略学習方式の確立を試みる点に特色がある。これは、既知の構造や機能に関する知識を、事例データに適用して、「抽象化に基づく類推」により、未知データの機能を分類・予測するものである。そして従来の知識ステムが備えるのと同程度の専門知識を用いて知識集約的な学習を実現しようという点で、帰納的手法・演懌的手法と相補的な関係にある。 この方法では、利用者との対話的なシステム利用によって、従来の学習システムには見られない、「学習機能の漸進的な向上」を達成することが可能となり、ゲノム情報のような非定型的な「データベースからの知識発見」問題に対する新しい道具となる可能性を秘めているといえる。一方、本手法を人工知能研究の立場から評価するためには、最近活発な研究がなされている帰納論理プログラミングや認知心理的な立場からの類推との関連性をより深く調査する必要がある。また、本手法を一般的な設計問題に適用して、応用分野の拡大をはかることも重要である。
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