研究概要 |
近年,知能ロボット群やソフトウェアエージェント群による柔軟かつ頑健な問題解決等への応用を目指して,多数の自律的なエージェントの集団で構成されるマルチエージェントシステムに関する基礎的な研究が展開されている.本研究の目的は,適応性に乏しく,柔軟性や頑健性に欠ける現在のマルチエージェントシステムを飛躍的に適応的なものとするための要素技術,特にエージェントの集団に協調関係を自己組織化させ,動的かつ適応的にその性能を向上させる機構を確立することにある. 平成7年度は,自己組織性をもつマルチエージェントシステムの構築手法として,強化学習および遺伝的アルゴリズムに代表される人工生命的接近法の頑健性が確認できた.しかし本研究で扱ってきた問題は例題的なものであり,これらの手法をそのまま現実のマルチエージェントシステムに適用するためには,解決すべき問題が山積している.特に,マルチエージェント環境におかれたエージェント群は,その各々が環境からの感覚入力だけでなく,他のエージェントが発生する様々な信号も含めた膨大な量の信号に対して適切に振る舞う必要があることから,従来の人工生命的な学習手法を各エージェントに組み込んだだけでは,それらの状態空間が爆発してしまい,それらに協調関係を効果的に組織化させることはきわめて難しくなる.平成8年度は,この問題を解消するために,各エージェントの状態空間を適度に圧縮しながら,それらに適切な協調関係を組織化させるためのモジュール分割型強化学習と呼ばれる手法を提案すると共に,種々のマルチエージェント学習問題への適用を通して,その有効性を確認した.
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