研究概要 |
本研究の目的は,例による学習の理論モデルである帰納推論の研究を通して,機械学習の実現可能性を探ることにある.一般に,学習に用いられる例は,正のものと負のものに分類できる.言語(文法)の学習においては,正の例は,(文法的に)正しい文に相当する.実験から得られるデータのうち,ある形質などに関連すると判断・分類されるものは,その形質を説明する正の例と考えられる.本研究では,正例のみに基づく帰納学習の原理的限界を解明するととともに,実際の応用の観点から効率的帰納学習アルゴリズムを探究していく. 本研究で取り上げた,帰納学習の対象である(1)パターン言語の組,および(2)基本形式系(Elementary Formal System)について, (a)正例からの学習可能性 (b)学習の効率(計算時間,例の個数,仮説の変更回数) の観点から理論的な考察を行った. まず,効率を無視した原理的な正例からの学習可能性(a)については,(1),(2)いずれにおいても,パターン数や公理数を有限個に制限することにより,肯定的な結果が得られた. しかし,学習の効率(b)については,さらに学習対象を制限する必要がる.パターンとは,定数記号と変数からなる文字列であるが,各変数が2回以上出現しない正則パターンに制限すると,多項式時間で例を説明する極小な仮説を生成できることがわかった.基本形式系に同様の制限を行った場合については,さらなる考察が必要であることもわかった.
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