本年度は本研究課題の最終年度であるため、研究のとりまとめを主目標として作業を行った。とくに、システムの構築、チューニング、改善の作業を継続し、完成度の向上を図った。胃X線二重造影像の領域分割については、胃、バリウム溜り、脊柱といった個別の臓器領域の認織方式を統合した画像理解システムとしての一応の完成を見た。胃領域については線追跡にもとづく方法と動的輪郭モデルにもとづく方法を開発し、いずれも良好な認識性能を得ることができた。バリウム溜り領域については零交差による縁検出にもとづく方法と凹点の群化と領域成長にもとづく方法を開発し、いずれも良好な認識性能を得ることができた。脊柱領域についてはバリウム溜り領域の認識結果を用いて、そこからの妨害情報を排除することにより、画像上部の水平走査線上の濃淡プロファイルから脊柱の両側を検出し、それらのハフ変換によって辺縁を直線として粗抽出した。これによって良好な認識性能を得た。また、これまでに積み残した問題として、差分マスクによる縁強調にもとづく方法についても再検討し、バリウム溜り領域の認識結果を用い、また、マスクサイズを見直すなどの詳細な実験と改善を行った。しかし、これによって性能の向上は認められたものの、十分な認識性能を達成することはできないことが分かった。また、顎関節X線画像の領域分割については、画質が劣るにもかかわらず、前処理、モデルにもとづく縁強調と目的関数最適化によって関心領域のトレースを得ることができるようになった。さらに、関心領域の計量についても指針を与えることができた。最後に研究成果報告書のとりまとめを行い、方法を詳細に述べるとともに、処理の結果を認識の失敗例も含めてすべて示した。
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