ニューラル・ネットワークや論理回路網に代表される多素子系に対して、どのような場合にエネルギー関数が存在するかを検討してきた。非同期的な動作モードの下での全域的状態遷移図をグラフと考えると、異なる状態に遷移する枝の包含関係によって論理回路網間に順序を定義することができる。エネルギー関数を持つ論理回路網よりこの順序で「小さい」論理回路網は同じエネルギー関数を持つことが示される。ここでエネルギー関数を持つ極大な論理回路網がどのようなものかが問題になるが、それは次のように表現できることが解かった。論理回路網が狭義のエネルギー関数を持つとは、関数値の減少と対応する状態遷移が等価になっていることだとする。この狭義のエネルギー関数を持つ論理回路網が極大要素となるのである。さらに一般に論理回路網を高次のニューラル・ネットワークとして表現すると、この狭義のエネルギー関数を持つ論理回路網の場合、係数が対称な表現をもつことも明らかになった。これは、エネルギー関数をd次の状態関数として表現すると、各論理素子はエネルギー関数を各変数で偏微分した(d-1)次の状態関数にヘビサイドの演算子を作用させたものになることから来ている。 任意の自然数nに対して、n素子からなる論理回路網の全体は、上に述べた順序の下で、完備束になっていることも明らかになった。この論理回路網間の順序については、各論理素子に対応している論理関数間の関係としても表現出来る。即ち、各論理関数を、それが表現している変数で展開して、その係数となる二つの(n-1)変数の論理関数の組の間にある論理関数間の大小関係を定義すればよい。
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