ニューラル・ネットワークや論理回路網に代表される多素子系に対して、どのような場合にエネルギー関数が存在するかを検討してきた。その結果次の様な性質が明らかになった。 1)非同期的な動作モードの下での論理回路網の全域的状態遷移図をグラフと考えると、異なる状態に遷移する枝の包含関係によって論理回路網間に順序を定義することができる。エネルギー関数を持つ論理回路網よりこの順序で「小さい」論理回路網は同じエネルギー関数を持つ。 2)論理回路網が狭義のエネルギー関数を持つとは、関数値の減少と対応する状態遷移が等価になっていることだとする。この狭義のエネルギー関数を持つ論理回路網が上に述べた意味の順序に関して極大要素となる。 3)さらに一般に論理回路網を高次のニューラル・ネットワークとして表現すると、この狭義のエネルギー関数を持つ論理回路網の場合、係数が対称な表現を持つ。 4)状態関数とは回路網の状態集合から実数への関数である。ハミング距離が1である状態に対して対応する実数値が異なるとき、その状態関数をr-単写と呼ぶ。論理回路網がr-単写なポテンシャルを持つことと高次のニューラル・ネットワークとして表現したとき係数が対称となることとは同値になる。 5)論理回路網がエネルギー関数を持つための必要十分条件は、1)の順序の意味で大きい、狭義のエネルギー関数を持つ論理回路網が存在することである。 6)任意の自然数nに対して、n素子からなる論理回路網の全体は、上に述べた順序の下で、完備束になっている。 この論理回路網間の順序については、各論理素子に対応している論理関数間の関係としても表現出来る。即ち、各論理関数を、それが表現している変数で展開して、その係数となる二つの(n-1)変数の論理関数の組の間に、ある種の論理関数間の大小関係を定義すればよい。
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