本研究の目的は 文様・絵画などの静止画像データベースを対象に、スケッチ画や断片的な部分画像およびこれらの合成画像を入力として、入力画像に類似した原画像を検索する方式を確立することである。そのため、本研究では ウェーブレット変換と局所自己相関特徴判別関数に基づいた統一的な類似画像検索方式を提案し、歴史民俗資料カード(国立歴史民俗博物館所蔵)の日本古典絵画、文様、土器などの写真データベース(約10ギガバイト)を対象に実働システムを開発した。主要な研究成果は以下の通り: 1:ウェーブレット変換と局所自己相関特徴判別関数に基づいた統一的な類似画像検索方式を提案し、この方式によってエッジなどの輪郭情報と背景テクスチャ、縮小画などの部分画像 各々による類似画検索が効果的に実現できることを示した。また、スケッチ画と部分画像との合成による質問画に対しても、検索時に解像度を識別する、などの手法により類似画が効果的に検索できることを示した。(平成7、8年度) 2:上記提案方式による大規模画像データベース検索システムをマルチプロセッサ・ワークステーション上に試作し、歴史民俗資料画像データ10GBまでを用いた類似画検索環境を稼働させた。(平成8年度) 3:ウェーブレット変換によって得られる多重解像度分解を元にしてテクスチャ情報を抽出する技術を開発した。これにより、原画像をいくつかの基本テクスチャ領域に分割してテクスチャ情報による類似画も検索できるようになった。(平成7、8年度) 上記研究成果により、ウェーブレット変換を用いることで大容量の原画像データベースに対し その輪郭情報、部分画情報、テクスチャ情報による類似画像検索インデクス・ファイルを自動的に生成でき、効果的な類似画検索が簡単で統一的なシステム構成で実現できることが明らかになった。
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