研究概要 |
平成7年度は,不確実データを処理するDS理論と従来のベイズ型確率理論とを融合させた,新しいタイプの情報統合方法を理論的に確立することを目標とした. 1.初めに,DS理論における不確実データの統合規則をまとめるため,関連する文献を調査、従来提案されてきた各規則での問題点を整理した。複数の主観的評価の統合化に伴う不確実データの処理は,DS理論の解析中でも最も重要なステップだが,未だ最適な規則や普遍的な規則は確立されていない状況である.そこで多くの規則を含む、より一般的な統合規則の表現を検討、数値シミュレーションでその妥当性を評価した. 2.次に、主観的確信情報と客観的確実情報との融合方法を確立するために,はじめにDS理論における不確実データと確率論に基づく客観データの性質を比較、それらの関係を考察した。ここで、質的に意味の異なる両データを同一のモデル上で扱うためには、確率値の表すものはいったい何か、といったphilosophicalな観点からの考察が不可欠であることが明らかとなった。この問題は、リスク解析において、発生事象の頻度的確率表現がリスクマネジメントの根拠となり得るのかという確率表現の本質的問題とも密接に関連する問題であり、認知心理学、人間工学などの観点からそれらの問題を調査、整理した。 3.上記の1及び2の結果を利用して、どのような主観的追加情報が有効かを検討し,ヒューマン・マシン協調型監視システムにおけるヒューマンの役割を明らかにするモデルを作成した。この数理モデルによって、主観的追加情報を得るための時間的余裕やヒューマンエラーの影響を数値で表現し,人間の介入が効果的となる条件を厳密に議論できる。
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