平成8年度は、平成7年度まで解析してきた安全監視システムモデルを精緻化し、状態判定の難しいグレーゾーンにおいて判定結果が対立した場合にも効果的に処理できる統合規則をDempster-Shafer理論モデルで考察、従来の統合規則を拡張した。そして、主観的確信情報と客観的確率情報とを融合させることが効果的であるための条件を明確に示し、グレーゾーンにおけるそれらの情報統合方法についての考察を進めた。 後半は、主観的確信の典型例として、人間がグレーゾーンに対する検査活動によって新しく得ることのできる確信情報に着目、その確信情報の信頼性がどのような要因に左右されるかを考察し、認知メカニズムの観点から人間信頼性を数理モデル内に取り入れて上記のモデルをさらに拡張、情報統合への影響を考察した。 これらの研究経過は、計測自動制御学会学術講演会やIEEE-ROMAN96、IIGSS'97(国際一般システム論学会)、国内シンプジウムなどで発表し、有益な指摘を得ている。 当初、正確な自動判定の対象領域をいかに拡大させグレーゾーンの縮小化を図るかが本研究の目的の一つであると考えてきたが、上記の研究過程で、グレーゾーンにおいて得られる専門家からの主観情報、経験に基づく判断を取り入れることは、むしろ判定の信頼性向上につながる可能性が示唆され、グレーゾーンの削減と不確実性の削減との関係を明確にすることが今後の課題として残された。不確実性削減のための学習として、アップデイトによる逐次改善がどの程度有効かは未だ解析中であり、平成9年度にこの点からの研究を継続する予定である。
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