研究概要 |
最適化問題の中でもネットワーク流問題は,問題を定義する関数がすべて線形関数であり,またネットワーク構造を効果的に利用できることから,比較的易しく解ける問題クラスとして知られている.ところが問題の線形性は,本来規模の経済の働きなどによって非凸型であるべきものを近似した結果にすぎず,より精密なモデル化では非凸性の現れることが希でない.本研究では,現実の問題を定式化した場合,非凸型に作用する変数の数は線形に作用する変数の数に比べて極めて少ない点に着目し,いくつかの非凸型ネットワーク流問題に対して効率的に大域的最適解を生成するアルゴリズムを提案した.その具体的な例は以下の通りである: (1)Hitchcock型輸送問題で,供給点の中の2つが輸送すべき製品の生産拠点である場合を考察し,凹型の生産費用と線形の輸送費用の総和を最小化する準多項式時間アルゴリズムを設計した.生産拠点の数は2つに固定されているものの,供給点の数まで固定していた従来の方法より一般化された問題を解くことが可能となった. (2)ネットワーク上で総流量と輸送費用とを同時に最適化するネットワーク流問題を考察し,2つの値の積を最適化する方法を提案した.準凹型である線形乗法関数の最小化問題として定式化されるが,その大域的最適解を準多項式時間で,ε近似解であれば多項式時間で算出することに成功した. (3)最大流問題において,2つの流出口を流れの生産拠点と捉え,凹型生産費用と線形輸送費用の総和が一定予算を越えないように制約を追加した場合の考察を行った.生産費用の凹性によって問題は逆凸計画問題となるが,(1)のアルゴリズムを手続きとして多項式回だけ適用すれば,その大域的最適解は準多項式時間で算出できることを示した.
|