本研究は、人間機械系の設計や評価段階でその安全性を検討するために必要となる安全性解析方法の確立を目的とする。 研究計画の初年度である平成7年度は、人間機械系における人間と機械の状況依存型モデル表現法とそれに基づく事故発生系列の導出法、および認知工学的知見を考慮した、事故防止策を検討するシステム工学的方法について検討を行った。人間と機械の間の依存関係を表すために両者の相互作用を明確にして考慮すべき因子の抽出を行った。相互影響因子を人間あるいは機械の外部環境からの入力とみなして、各行動モデルをIF (条件) THEN(行動)のような条件行動ルールで記述した。人間は必ずしも機械と同様に表せないが、状況に応じて行動規範やルールを切り換えると同様な表現形に帰着できた。人間と機械モデルを相互作用させながら行動ルールを発火させて、人間の行動特性に基づく応答系列を(全体の状況、人間行動)の対の形で導出した。 第2年度である平成8年度は、主として人間機械系に生じる事象系列に基づく安全性解析システムを構築し、解析した。簡単なタンク注入作業やランプ点灯作業を例として、どのような事象系列が発生するかでヒューマンエラー(HE)の影響を検討した。特に、人間の行動を状況の経験度に応じて、ほとんど反射的に行動するスキルベース、ノウハウを基にして行動するルールベースと未経験の状況で一般的な知識に基づいて行動する知識ベースに分類して表した。各作業状況でどのようなHEを想定すべきかを検討するために人間行動に関する認知工学などの知見が重要である。また、人間機械系の安全性解析に関連して、機械系の故障がシステム挙動にどのような影響を与えるかを解析するために、エネルギー流に着目したボンドグラフで表された挙動モデルを用いた解析法を検討した。
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