研究概要 |
本研究の初年度である平成7年度には,被災時点において島原市に居住していた8,000名余りの被災住民がそれぞれの避難所に居た期間,仮説住宅への移動時期,さらに平成7年6月現在での現住所に関する資料を閲覧入手したので,コンピュータ処理可能なファイルを作成するための入力作業を行った。これらの資料とともに,約8,000名の被災者の世帯構成や被害状況に関する資料も,プライバシーの秘守義務を前提として,閲覧できるようになったので,ファイル化のための入力作業を継続中である。なお,一部完成したファイル資料に関しては,世帯の属性と居住地移動および世帯分離,被災状況と居住地移動などとの関係に注目して,被災住民の空間的な集散過程を明らかにする解析作業を継続中である。また,町内会の組織・機能に関しても,町内会長などへの聞き取りを始めており,例えば町内会員の空間的な離散に伴う行政側からの情報伝達パスの複線化や,核家族化などの世帯分離,他町あるいは市外への個別的な転居・転出などによる,町内会構成員の変動に伴う町内会行事の簡略化・廃止など,多様な変貌が確認されつつある。なお,本研究では住民の空間的な集散によって,従来の町内会組織・機能あるいは個人レベルの生活が如何に変質していくかに注目しているので,約8,000名にのぼる被災住民の世帯構成や被災状況に関する資料とともに,被災住民の空間的な集散過程に関する資料は,平成8・9年度の研究における重要な基礎資料と位置付けられる。従って,当面はこれらの資料のファイル化作業を急ぎ完了するとともに,町内会長・町内会員などへの聞き取り作業をさらに進めていく予定である。
|