中部地方に被害をもたらす地震には、太平洋側の海底に震源をもつ海溝性巨大地震と内陸直下型地震とがあるが、本研究では中部日本のテクトニクスの解析を通して両者の時空分布を明らかにし、内陸地震に伴う地盤災害の予知に貢献せんとするものである。本研究で明らかになったことを以下に列挙する。 1.内陸地震は特定の活断層の周期的な再活動によるのではなく、マグニチュード6.4以上の被害地震はいくつかの活断層から構成されるブロック境界や構造線に沿って、一定の時系列の下で発生している。これらのブロック境界や構造線に囲まれた各ブロックは、北西側の大陸プレートと南東側の海洋プレート間にあって、いくつかのマイクロプレートを形作り、プレート運動に伴ってブロック回転運動が生じ、地震はブロック境界に沿って発生する。 2.これらブロック境界に沿う被害地震の時系列から、地震の活動期と静穏期の明瞭な周期性が発見され、その繰り返し周期は約1000年程度と見積もられる。 3.活動期の継続時間は数百年で、一つのブロック境界に着目すると、各被害地震はその破壊領域が重ならない形で発生している。 4.ブロック境界線での内陸地震と海溝性巨大地震との時空パターンの解析の結果、両者は密接に連動して発生しているようにみえる。 5.被害地震発生の連動性(カップリング)は、一次元スティック・スリップモデルを用いたシミュレーションにおいてもよく再現される。
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