本研究は、21世紀前半にも発生するといわれている南海道の巨大地震に伴う大津波による四国沿岸域の危険度を診断するための手法を確立するため、津波の波源域を変化させることにより、沿岸域を襲う津波のエネルギーや津波の到達時間について考察したものである。 まづ、これまでに収集した四国沿岸域における歴史津波資料に基づき、津波浸水高の現地調査を引き続き行い、高知県幡多郡大方町、同土佐市宇佐における現地調査を実施し、有益な浸水高のデータを得た。一方、昭和南海地震津波(1946)の大きさを有する波源域を8通り南海トラフ沿いに移動させ、それぞれの波源から波向線方程式・波峯線方程式により沿岸域への津波の集中、発散の状況を調べ、津波波高、到達時間から津波の危険度を評価する手法を採用した。ここでは、四国の太平洋沿岸域を海岸線の距離が等しくなるよう14の領域に分割して考察し、その結果、足摺岬から須崎に至る沿岸、室戸岬から蒲生田岬に至る沿岸などは、津波の発生位置(波源域)がどこになろうとも、津波のエネルギーが集中しやすいことが明らかになった。また、津波波源の変化に伴う四国沿岸域での津波到達時間を考察した結果、豊後水道および紀伊水道では、津波の最短到達時間は10〜50分と大きく変化することがわかった。また、土佐湾への最短到達時間は、地震発生直後か遅くとも20分以内ということがわかった。
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