研究概要 |
わが国周辺の合計20地点における最長14年間の沿岸・外洋・内海長期波高観測資料(1〜3時間間隔)の統計解析に基づき,(1)長期波高および極大波高の確率分布は3母数Weibull分布,波の継続時間分布は2母数Weibull分布,継続時間あるいは極大波高の出現度数は指数関数型分布で近似される,(2)各分布の母数は海域の水平スケールや季節によらず,長期波高の平均値で無次元化した長期波高分散値と基準波高値を説明変数とする対数線形回帰式によって比較的よく表示されることから,上述の各波候代表量は狙い近似では相似構造をもつ,(3)年単位あるいは季節単位の平均波高,波高標準偏差,基準波高を指定すれば,わが国周辺任意海域における長期波高分布,高波の継続時間分布および極大波高分布とその年平均発生数を本研究の回帰式に基づいて評価することが可能であり,その結果,継続時間を考慮した極大波高の再現期間(波の継続時間および極大波高値も入力値とする場合)や特定の再現期間に対する波高の継続時間および極大波高(再現期間を入力値とする場合)を推定できる,ことが見出された。また,わが国沿岸の灯台(33地点)で17〜34年間にわたり6時間ごとに取得された長期風速観測資料に対しても同様の解析を試み,上述の(1)〜(3)の結論が風速資料についても成立することを確認しつつある。したがって,少なくともわが国沿岸における波候代表量や風候代表量は季節や地域によらず相似構造をもつと考えられるので,波高や風速の平均値,標準偏差および基準値を指定することによって,継続時間を考慮した波高や風速の極値推定法がほぼ確立されたといえる。このほか,長期波高および風速資料のスペクトル特性,極値統計解析における母数推定法の精度および長期波候推算システムの適用性を明らかにすることにより,次年度における継続研究の基礎的成果を得た。
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