研究概要 |
気象庁が編集した『北西太平洋海面水温データ』を用いて,海面水温と台風の発生率および発達率との間の統計的関係を調べた。その結果,発生率・発達率ともに海面水温が29.5℃付近の海域で最も高くなることが明らかになった。また,エルニーニョ現象が発生した年には,北西太平洋では海面水温が下がり,台風の発生数も減少する傾向があるが,海面水温と発生率の関係は変化しなく,29.5℃付近で最も高くなり,発生率も非エルニーニョ年とほぼ等しいことが明らかになった。これは、海面水温の分布が変化しても,海面水温と発生率の関係は変化しないことを意味していて,地球の温暖化に伴って海面水温が上昇した場合にも,この関係が適用できることが確かめられた。 現在は,海面水温と台風の発生率の統計的関係を用いて,北西太平洋において,現在からの水温上昇量ごとに,台風の年間発生数と発生場所のシミュレーションを行っている。近いうちに,この結果から,海面水温の変化にともなう台風の発生数と発生域の変化の予測を行う。 さらに,これら個々の台風については,コースと中心気圧の変化のシミュレーションも行っている。この結果を利用して,海面水温上昇ごとに日本本土に来襲する台風の頻度と勢力の変化を予測する。 平成9年度には,シミュレートした台風の気圧分布から風速分布を推算し,日本各地の年最大風速の再現期待値の地理的分布を予測する。
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