研究概要 |
台風の発生・発達は,海面水温の他に,風の鉛直シアや下層大気の相対渦度などの影響を受ける。そこで,海面水温以外の影響が少なく,台風発生頻度が高い北西熱帯太平洋中央部(10〜21N,120〜160E)の暖候期(6〜11月)に限定して,海面水温と台風発生率・発達率との間の関係について統計的調査をやり直した。その結果,発生率は海面水温28.8〜29.8℃の海域で大きく,緯度1°×経度1°の区画内で月間0.005個を超えていて,29.5℃付近で最大となる。一方,発達する(5hPa/6hours以上の中心気圧下降率)台風の相対頻度についても,28.6〜30.0℃の海域で35%超えていて,発生率と同様に,29.5℃付近の海域で最大となる。この水温域は,南シナ海や亜熱帯を含めたより広い海域を対象とした以前の調査と同じである。 この結果を利用して,この海域に限定した海面水温上昇に伴う暖候期台風発生数の予測を行った。その結果,海面水温が現在より0.2℃上昇したときに発生数が最大(現在よりも0.1個多い12.2個)となる。さらに昇温すると発生数は減少していき,1.0℃上昇時には現在よりも2.0個少なく,2.0℃上昇時には2.7個少なくなる結果が得られた。 次に,台風の中心が通過した海域の平均海面水温と最低中心気圧との間の確率分布について調べた。その結果,海面水温の分布を与えれば,台風の発生位置と経路を確率的に決定して,最低中心気圧を予測することが可能となった。 さらに,従来の研究で開発した気圧分布から地表風速を推算する方法を利用して,海面水温上昇に伴う風速の再現期待値の変化の統計予測が可能となった。
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