海面水温以外の影響が少なく、台風発生頻度が高い北西熱帯太平洋中央部の暖候期に限定して、海面水温と台風発生率・発達率との間の関係について統計的調査を行った。その結果、単位面積当たりの月間発生率は海面水温28.8〜29.8℃の海域で大きく、29.5℃付近で最大となる。また、台風発達率についても、5hPa/6hours以上の中心気圧低下率をもつ台風は28.6〜30.0℃の海域で35%超えていて、29.5℃付近の水温域で最大となる。 この結果を利用して、この海域において海面水温上昇に伴う暖候期台風発生数の予測を行った。その結果、海面水温が現在より0.2℃上昇したときに発生数が最大(12.2個)となり、現在よりも0.1個増加する。しかし、1.0℃上昇時には2.0個減少、2.0℃上昇時には2.7個減少するという結果が得られた。 次に、台風の中心が通過した海域の平均海面水温と最低中心気圧との間の確率分布について調べた。その結果、海面水温の分布を与えれば、台風の発生位置と経路が確率的に決定でき、最低中心気圧を確率的に予測することが可能となった。 さらに、従来の研究で開発した気圧場から地表風速を推算する方法を合成して、海面水温上昇に伴う風速の再現期待値の変化の統計予測が可能となった。 なお、巨大台風出現可能性の予測については、本研究で得られた結果を利用して、近い将来に実施する。また、本研究の調査対象域は、北西太平洋中央部の台風発生頻度が高い海域に限定した。北西太平洋全域における台風数変化や巨大台風出現可能性の予測については、海面水温だけでなく風の鉛直シアなどとの関係の調査も必要であると考えられる。これについては、今後の課題とする。
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