我々は高温伝導体の新しい応用として、荷電粒子ビーム用レンズ(スーパートロン)を提案・開発している。スーパートロンの動作原理は超伝導体のマイスナー効果に基づいている。すなわち、荷電粒子ビームが超伝導体円筒内を通過する時、ビームの自己磁場はマイスナー効果により円筒内へ閉じ込められる。その磁場はビーム自身を細径化する。このようなスーパートロンを用いて、本研究では単発パルス放電プラズマ(ネオンガス、0.2Torr)を閉じ込める事を試みた。 放電管としてビスマス系粉体プレス超伝導体パイプ(臨界温度Tc=103K、長さ60mm、内径11mm、厚さ2mm)を用い、このパイプに銅製パイプ(長さ30mm、内径11mm、厚さ2mm)を従属接続した。これは同一ショットに対する両パイプ間の比較を行うためである。使用超伝導体は平均粒径10、および擬似的に50μmのもの二種類を用意した。パルス電圧(10〜25kV、半値全幅〜100ns)を印加して、放電管からの発光特性を調べた。その結果、放電プラズマが細径化されている明白な事実を得ることができなかった。しかし、放電プラズマ閉じ込めの兆候を認めた。すなわち、(1)アフタ-グロー中の赤色光[614.3nm:中性原子]は、超伝導体パイプを超伝導状態にした時に、三倍以上に強くなった。これは、通電時の放電プラズマに閉じ込め効果が作用した故であろう。(2)粒径50μm以上の放電管では、粒径10μmのものよりも、アフタ-グロー時の紫外光[377.2nm:一価イオン]強度が放電電流と共に対数的に増大する電流範囲が広い。この粒径効果がフェライトコア・モデルによって説明できる。(3)放電電圧は25kVまで上げたので、恐らく二価、三価と高次イオンが生成されているであろう。今後はこの高次イオンからの発光特性を観測する予定である。
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