本研究の目的は、トカマクプラズマ境界の分光診断用に超音速中性粒子ビーム法を開発することにある。特にプラズマ境界に誘起される電場分布の測定がレーザー誘起蛍光法を併用すれば可能であることを示す。このために、小型の超音速中性粒子ビーム装置を製作して、レーザー誘起蛍光法も含めた分光計測により粒子ビームの特性を明らかにしてトカマクプラズマに適用可能であることを示す。本年度の目標は、超音速中性粒子ビーム装置の製作に重点を置く。同時に、この装置により生成される超音速ヘリウム原子ビームがプラズマ中でうける原子過程を衝突放射モデルにより数値的に研究する。 製作された装置の概要は、次のようである。超音速粒子ビームの生成には、内径0.8mmのノズルをもつマイクロ電磁弁より真空中にヘリウムガスを噴出し、これを1.0mmの入り口穴のスキマ-でコリメートする。さらに、この粒子ビームにグロー放電を行って準安定原子を生成できる。この電磁弁は、1から数10ms幅のパルスモードで作動させる。真空排気系は、スキマ-で二分されており、ガス噴出側は4.5インチの拡散ポンプで、スキマ-でコリメートされた粒子ビームは小型のターボ分子ポンプでそれぞれ排気される。この装置の全長は約1mで、その先端部はプラズマ装置に容易に結合できるようになっている。現在、既設の高速電離真空測定装置で、生成したヘリウムビームの強度および広がり角の特性を測定している。 一方、超音速ヘリウム原子ビームが中型のトカマクプラズマ(小半径30cm)中でうける励起・電離過程の数値計算より、レーザー誘起蛍光法を適用した電場強度測定が、50V/cmの電場強度までは可能であることを示した。
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