ソリトンの理論分野の研究で、空間次元が高くなると可積分性が失われ、解は自己収束し有限時間内で爆発(崩壊)するとされる。我々の実験で得られるソリトンはプラズマ中の高次元ソリトンとみられる事から、自己収束と爆発が実際に起きているかどうかは極めて興味がある。我々は今回、(1)電子の散乱の調査、(2)ソリトンが爆発(崩壊)すると考えられる位置でのソリトンの調査、の二点に重点を置いた。 まず(1)に関しては、波の強度の2乗と4乗に関係する電子の散乱が存在した。この強度の2乗特性の部分はKodama-Hasegawaによって議論された非線形Schrodinger方程式の高次項の寄与、つまりRaman散乱に一致する。しかし、強度の4乗に関係する部分は彼らの解析にはなく、更に高次項の現象が現れたと考えられる。また散乱は波の強度の大きい場所、即ちビーム入射口から24.5cm〜26cm付近で特に顕著に起きる。 上記(2)に関しては、プラズマ中で高域混成波ソリトンが24cm〜27cmの限られた場所に特に多く存在する事が判明した。単位時間当たりのソリトンの出現数は25cmと25.8cmの二箇所が最大だが、振幅または強度はその場所が最大ではなく、24.5cmの位置が最大になる。つまり、24.5cmではソリトンの出現数は少ないが、総てが強度が強く且つ時間的な幅は狭い。 次に24.5cm付近に現れる時間幅が狭く強度の強いソリトンの安定性と、それが引き起こすビーム・プラズマ放電の関連性については、ソリトンの高周波圧力で電子ビーム上に発生したとみられるキャビトンの深さをI_d、ビーム電流値をI_bとした時、両者の比が、I_d/I_b【similar or equal】25%に達すると現象は非可逆的に進行し、高電離のプラズマが発生する過程(ビーム・プラズマ放電)に至る事を確かめた。また上記の時間幅が狭く強度の強いソリトンが爆発するとみられる条件が、ビーム・プラズマ放電の開始条件と微妙に一致する事から、放電の開始はソリトン爆発が引き起こすとみられるが、ソリトンの不安定性に付いては理論的に実際に即し研究中であり、今後詳細を発表する予定である。
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