平成7、8年度の当該研究は、精密なビーム制御が可能な静電加速器を用いた相対論的電子ビームを用いたスミスパーセル型自由電子レーザを建設し、その特性をミリ波領域で測定する事を目的としている。 静電加速器として1MVの小型コンパクトな、デスクトロン型静電加速器を稼動させた。電子源としては、エネルギー広がりの少ない光電効果による光電子ビームを利用した。このため、エキシマレーザからのパルス紫外光レーザを静電加速器内の陰極に照射し、最大1-4Aのピーク電流の電子ビームを発生させる事に成功した。 電子ビームのビームラインとしては、ビームラインパイプ中を、磁場偏向コイル及び磁場集束コイルを用いてビーム制御をおこないつつ、伝搬させる事に成功した。 スミスパーセル型自由電子レーザとしては、電子ビームと回折格子近傍の電磁波モードの分散式を解析して、最適な発振条件を理論的に設定した。この結果、目標発振周波数51GHzのミリ波での発振を試みる事とした。回折格子周期長2.5mm、長さ30cmの金属回折格子を製作した。 電子ビームの形状と位置を、上記の回折格子表面ぎりぎりに伝搬させる事を行った。現在までの所、Uバンド(45-60GHz)帯ミリ波領域での電磁波が、検波ダイオードによる波形検出によって確認されている。発生した電磁波のすべてのエネルギーを検波器に集める事はできていないが、約0dBmの出力が確認されている。51GHzのミリ波のスミスパーセル型自由電子の発振がおきているとする理論的予測と矛盾しない実験結果を得ていると結論できる。
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