放射性廃棄物の地層処分の安全性評価等に関連して、アクチノイド等の放射線毒性を長期に有する核種の地層中での挙動を知ることは緊急かつ重要な課題である。鉄やアルミニウム等の含水酸化物は、酸化物やケイ酸塩その他の結晶性鉱物の表面での溶解(風化)や沈殿(堆積)を通じて地層中に広汎に分布し、高い収着容量を有するので、地層中の核種移行現象を支配する重要な因子の一つである。しかし、これら材料の固液界面が長期の風化作用の結果として物理的かつ化学的に複雑な特性を有するので、その収着特性は明白ではなく、基礎的知見の蓄積が必要である。そこで先ず、鉄やアルミニウムの含水酸化物及び酸化物に対するトレーサー濃度の5価ネプツニウムの収着挙動を調べ、試料の結晶構造や表面状態による影響を検討した。鉄とアルミニウムの何れの系に於いても、鉱物や酸化物粉末よりも水溶液から沈殿させて得た含水酸化物(合成試料)の方が収着性が高く、また鉱物の間では風化生成物の収着性が良好であり、Np (V)の収着は含水酸化物や酸化物の結晶構造や内部表面の状態によって著しく影響されることが明らかとなった。次に、合成した非晶質含水酸化物及び天然鉱物のゲ-タイト、ギブサイトへのEu (III)及びCo (II)の収着のpHに対する変化を、広い範囲の金属イオン濃度に於いて検討し、金属イオンによる収着サイト占有の飽和効果を調べた。これらの含水酸化物に対する収着は、金属イオン濃度が低い場合には、唯一つの結合定数のみを仮定する単純なラングミュア式により説明できることが確かめられた。高い金属イオン濃度に於いては、ゲ-タイトとギブサイトへの収着はサイトの飽和を示す明確な極大値へと達するのに対し、非晶質含水酸化物への収着は金属イオン濃度と共に増加し続けることが確認された。このことより、均質な表面状態を有した鉱物への収着は、金属イオンとサイトの間の1 : 1の相互作用に支配されているのに対し、非晶質含水酸化物への収着は表面での沈殿生成や固溶体生成のような、鉱物に対する収着とは異なる機構で進むと考えられる。
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