本研究は、主としてアフリカのザイールとその周辺地域の熱帯雨林を調査して、この地域に関する科学評価データベースを作成するとともに、気候変動のほか、植生の空間的な分布や季節変化・年々変動を系統的に解析することをめざしたものである。1991年以来、研究代表者がザイール気象庁から入手した地上気象観測データや、アフリカ現地における野外調査で得た植生・環境・文化等に関する資料を整理し、本研究だけでなく今後の調査・研究に融合的に有効活用が可能なデータベースを作成してきた。 このデータベースの解析により、熱帯雨林気候とそこからサバンナ気候に遷移する気候帯において、以下の新たな知見を得た。 1.2〜5年スケールの顕著な気温の振動が存在し、これはENSOと密接に関係している。 2.約10年の周期的振動も存在し、太陽黒点数の変化と高い相関を示す。 3.どの地点においても、全球平均の昇温率に比べてかなり高い、永年的な気温の増加(30年で約0.5〜1.5℃)が認められた。 4.ほとんどの観測点で、相対湿度・降水日数・降水量が、緩やかであるが継続的に減少している。地域によっては、乾期が長くなるとともに、雨期における降水量が減少している。 5.こうした長期的な気候変動(地域的な乾燥化と温暖化)と、現地の人々の生活活動(焼き畑農業、山焼き、燃料用薪等)による森林伐採との関係が明らかになった。
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