研究概要 |
夜光虫は日本沿岸では頻繁に観察され、初夏にはしばしば赤潮を形成する。しかし、夜光虫は赤潮を形成していない時でも、海水中には生物量としては無視できない量存在していると考えられる。また、夜光虫の細胞内には、高濃度のアンモニアが蓄積されており、その海水中における生物ポンプとしての役割も注目されている。 まず、周年を通して、水柱内の夜光虫の細胞数を追跡するとともに、細胞の炭素含量も測定し、その生物量を炭素量(バイオマス)で表す事を試みた。その結果、夜光虫が植物プランクトンのみを摂食していたのでは、その生物量が維持出来ないことが推測された。つまり、従来知られていた植物プランクトンの摂食だけではなく、デトライタスなども摂食している可能性が示唆された。 夜光虫体内の栄養塩濃度を詳細に調べた結果、アンモニア態窒素・リン酸態リンおよびケイ酸態ケイ素が、一個体当たりそれぞれ2470,183,54pmol含まれていることが明らかとなった。また、夜光虫体成分のC:N:P比は、143:14:1であった。夜光虫のアンモニア態窒素の濃縮係数は40,000以上となり、海洋表層部における窒素栄養塩の供給源としては、無視できない役割を果たしていることが明らかとなった。 しかしながら、ケイ酸態ケイ素については、濃縮の度合いが大きくないことが分かった。これは、夜光虫が珪藻を摂食したとき、その殻をほとんど未消化のまま糞粒として排泄していることによることを、野外における試料採取と室内実験によって明らかにした。
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