凍結によ亜硝酸が溶存酸素による酸化される反応の促進機構は、多結晶氷の氷粒界に閉じ込められた未凍結溶液中で亜硝酸と溶存酸素が非常に高濃度により、-3℃亜硝酸が2400倍濃縮されていることがわかった。また、氷の溶質排除作用を利用した揮発性物質の揮散の研究を行った結果、全体が凍結した後に揮発性の溶質が時間と共に気相へ揮散することがわかった。これは、凍結濃縮による氷表面に溶質が濃縮され、凍結電位により表面のPHが低下して電気的に中性の酸が形成され、氷分子の凍結による構造化で溶質分子と水分子の結合力が弱められた結果、揮散が起こると考えられた。調べた物質の中で揮発速度は、ギ酸>酢酸>ブロピオン酸>酪酸>>塩化水素>>硝酸の順であった。揮散のしやしさは、酸解離定数により大きく支配されるが、沸点の違い、気体のなりやさが関係していることがわかった。また、つまり水分子と溶質分子の相互作用の強さも関係している可能性がある。 実試料のサンプリングを行い、分析を行った結果、冬期の試料の亜硝酸濃度が夏や霧の値より小さいことがわかり、自然界においても凍結による亜硝酸から硝酸に変化していることが示唆された。また、冬期の塩化物イオンについては夏季より低いことがわかり、凍結による揮散も考えらるが、さらに研究が必要であろう。一方南極やグリーンランドの雪の分析結果からギ酸や酢酸の揮散の可能性が指摘されており、今後、自然界で凍結過程により物質がどのように変化するかを調べる必要がある。
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