環境放射能^<14>Cとトリチウムの動態解析を進展させるために、試料処理法について研究した成果の概要を述べる。1.炭素14年代測定においては、採取した試料からいくつかの化学処理を経てベンゼンが合成される。この試料処理には多大な労力を要するので、我々は炭化試料が溶融リチウム金属と直接反応して炭化リチウムを生成する新しい迅速工程を提案した。炭化試料からアセチレンガスを発生する収率は見かけ上、平均して52.5±1.5%と低かったが、次のアセチレンからベンゼンを合成する工程の収率は90%以上であった。この方法で得られた試料の^<14>C年代は同じ試料について従来の方法で得られている試料の年代と統計誤差1σに対応する年代変化の範囲で一致した。この方法は燃焼およびそれに続く炭酸塩化工程を含まないので、試料処理時間はかなり短縮される。この結果はRADIOISOTOPES誌(47巻、3号、1998)に発表した。 2.近年、環境水中のトリチウム濃度は、しばしば使用しているシンチレーション計数装置の検出下限に近い、1Bq/1かそれ以下の値を示す。低トリチウム濃度を測定するために、我々は固体高分子膜を用いるトリチウム電解濃縮装置を開発した。得られたトリチウム回収率は体積減容率10倍において80%かそれ以上であった。この装置はいくらかの改良を加えた後、降水や沿岸海水等の環境水を濃縮するのに使用する予定である。 3.上述した研究の外に、青森県六ヶ所地区で採取した農産物や海産物の^<14>C比放射能に関する論文を発表した。 また、青森県東部地域で採取した環境水試料のトリチウム濃度について報告した。
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