1.環境因子のマイクロスケール解析に関して 琵琶湖南部の四ケ所の定点から、人為的な攪乱を最小限に押さえ、底泥(分解能が高い表層部分0〜10cm)を採取し、微生物活性に特に影響が大きい溶存酸素濃度を数10μmオーダーで解析した。その結果、酸化層は従来の予想よりはるかに薄く、表層のわずか2〜3mmにすぎないという結果を得た。 2.微生物の採取、保存 琵琶湖の北湖・南湖に設けた定点から、底泥を採取し深さ別に分け(表層から0〜1cm、2〜3cm、5〜6cm、9〜10cm)、環境微生物の増殖に適している低栄養培地を用いて、微生物を単離し、およそ2000菌株を得た。現在これら菌株の生理テスト、吸着能を検討中である。また、これら菌株は凍結保存し将来の研究に資する計画である。 3.南湖・北湖底泥の微生物数および増殖速度による類別化 琵琶湖南湖、北湖底泥中の微生物数がそれぞれ特徴的な季節変動パターンを示すことを見出した。即ち、底泥0〜1cm層で、南湖では6月に比べ8月の方が微生物数が増加したが(温度上昇のためと思われる)、逆に北湖では6月に比べ8月の方が微生物数が減少した(夏期に底泥直上水が嫌気的になるためと推測している)。また、北湖・南湖ともその底泥中の微生物は増殖速度が大きく異なる数グループから構成されていることが明らかとなった。 4.底泥の環境浄化能 微生物によるグルコース資化に伴う炭酸ガス発生量を連続的に測定した。その結果(1)以外にも北湖の方が南湖に比べ炭酸ガス発生量が多い(0〜1cm層で2〜3倍)、(2)北湖では表層から深くなるにつれ炭酸ガス発生活性は低下したが、南湖では深さによる活性の低下が見られなかった、(3)6月と9月を比較すると、南湖では炭酸ガス発生活性に大きな変化はなかったが、北湖では0〜1cm層で9月のサンプルの活性が増加した(コロニー数は減少しているので、通性嫌気性菌の割合が増加したためと思われる)。
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