琵琶湖北湖・南湖の特徴的な地点を選び、季節を変え、底泥をcmオーダーで0〜10cmにわたり分別採取し、微生物のフロラおよび環境浄化能(無機化活性)について調べた。その結果、琵琶湖底泥中には 1.栄養濃度のより低い培地でよく増殖する微生物が多いこと、2.底泥か深くなるにつれ、好気性微生物の割合が減少し、この傾向が夏に特に顕著なことが明らかとなった。また、3.北湖底泥中の微生物には増殖速度の小さなものが多く、その数は年間を通じて変動が少ないのに対し、4.南湖底泥中の微生物には増殖速度の大きなものが多く、年間を通じた微生物数の変動も大きいという、対照的なパターンを見出した。 底泥中の微生物による環境浄化能をグルコースの無機化活性により評価したところ、南湖に比べ菌数の少ない北湖でむしろこの活性が高いことが解った。これは、底泥中の微生物のフロラの違い(南湖より北湖の方が通性嫌気性微生物の割合が高い)に起因するものと推測された。 また、南湖では底泥表面からの酸化層の厚みが春で3〜4mm、夏にはわずか1〜2mmに過ぎないとう知見に基づき、mmオーダーで底泥を分別採取し微生物のフロラ、無機化活性を調べたところ、0〜10mm層では好気性微生物が大部分を占め、そのうち0〜1mm層中の微生物数の季節変動が特に激しいことが明らかとなった。 底泥中の微生物フロラを抗生物質耐性という別の視点で調べたところ、底泥が深くなるにつれ、耐性を持った微生物の割合が増すという傾向を見出し、詳細な検討を開始した。また、微生物吸着力の測定システム、微生物吸着能の簡便な評価法の開発、細胞表面ポリマー層の解析手法の確立および吸着能との関連性解明等、本研究遂行に関わる基礎領域で進展を見た。
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