研究概要 |
ダイオキシンの継世代的影響を調べるために、ゲノムインプリンティングに及ぼす効果を検討するための検出系の確立を行った。原理は、メチル化DNAを切断できるMsp1と、切断できないHpaIIで消化したDNAを鋳型として、切断サイトを挟んでPCRを行い、両反応の差からメチレーションの程度を推定する方法である。検討したメチレーション・サイトは、H19遺伝子エクソン5に存在するMspI切断部位(サイト9)を用いた。この方法により、マウス始原生殖細胞系列の細胞株(EG細胞)を用い、父親由来染色体のH19遺伝子におけるDNAメチレーションに、ダイオキシンが及ぼす影響を検討した。 松居らにより樹立されたEG細胞は、始原生殖細胞のさまざまな発生段階の細胞の集団からなると考えられている。そこで、さまざまなゲノムインプリンティングを受けた状態のEG細胞があるので、マウス第7番の母親由来染色体から転写されるH19遺伝子DNAのメチル化状態を調べた。まずDAB-3-7細胞を、マイトマシン処理したフィーダー細胞STO(3x10^6 cells/90cm dish)上に蒔き、48時間後に終濃度2nMあるいは20nMとなるようにTCDD(2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin)を培地に加えた。TCDD処理後、24時間と48時間後に細胞を集め、DNA調製の材料とした。上記の方法に従い、各々のDNAのメチル化率を求めると、TCDD処理細胞も未処理細胞も、ほとんど100%メチル化されているという結果を得た。
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