研究課題/領域番号 |
07680574
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
酒井 一夫 東京大学, 医学部, 講師 (40153837)
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研究分担者 |
平野 和也 東京大学, 医学部, 助手 (80251221)
伊藤 正光 東京大学, 医学部, 助手 (80176362)
鈴木 紀夫 東京大学, 医学部, 教授 (10010050)
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キーワード | 温熱感受性 / 温熱抵抗性 / 細胞融合 / 遺伝子クローニング / 色素排除試験 / DNAラダー |
研究概要 |
環境ストレスのうち温熱ストレスに着目し、チャイニーズハムスターV79細胞(温熱高感受性)とヒトグリオーマA7細胞(温熱抵抗性)および両者の融合細胞(温熱感受性はV79とA7の間に分布)を材料として、温熱抵抗性を規定とする遺伝子の単離へ向け作業を進めた。融合細胞のうち温熱抵抗性を示すクローンVA41-4よりDNAを抽出し、V79に導入して温熱抵抗性形質転換細胞株I-41を得た。サザン解析により、融合細胞、形質転換細胞いずれにもヒト反復配列がスメア状に認められ、温熱抵抗性を与える遺伝子を含めてA7由来のDNAが多量に存在していることが示唆された。ヒト反復配列をプライマーとしてPCRによる解析を行ったが、温熱抵抗性細胞に共通に存在し、温熱高感受性細胞には存在しない配列は見出せなかった。プライマーの選択を含め、条件検討を行って検索を進める予定である。スクリーニングの効率を高めるために、I-41のDNAを用いて2回目の形質転換を行い、温熱抵抗性クローンを得るとともに、I-41のcDNAからVA41-8(融合細胞のうちV79と同等の高感受性を示すクローン)のmRNAを差し引く形のサブトラクションプローブを作製した。 一方、温熱抵抗性遺伝子の機能を探る目的で、V79、A7、VA41-4およびVA41-8の温熱処理に対する応答の違いを検討した。V79細胞では44℃-1hr処理後4時間目以降viabilityの低下(死細胞の出現)が認められたが、A7では、死細胞の出現が遅く、同程度以上の致死効果を示す44℃-5hr処理後でも死細胞の出現が顕著となるのは30時間目以降であった。VA41-8ではV79に近い、VA41-4ではA7に近い時間経過で死細胞が出現した。温熱処理後、V79とVA41-8では温熱処理直後からDNAラダーが観察されたが、A7とVA41-4ではDNAラダーは認められなかった。これらより、「温熱抵抗性遺伝子」はDNAラダーを伴う速やかな細胞死を抑制する機能を有するものと推察される。 今後、温熱抵抗性形質転換細胞のcDNAライブラリーを作製し、ヒト反復配列を指標としたプローブあるいはサブトラクションプローブを用いてスクリーニングを進める予定である。
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