研究概要 |
1 新潟県内に降った雪はその成分の分析結果などから,島根県から秋田県に至る日本海側の雪とほぼ同一の特性を持つと考えられた。多変量解析の結果から,新雪のpHが特に低いのは硫酸イオンの影響であることが確認された。積雪層を深さ別にイオン分布を調べたところ,表層ほど塩化物オインやカリウムイオンが少ないことが判明したが,pHは表層ほど低い値であった。 2 酸性降下物の樹木への影響を調べるために,樹体の異なる位置と樹木下の土壌層中での雨や雪解け水を採取し,その中の酸性降下物の量を調査した。測定地点は新潟県佐渡郡相川町大字小田で,天然スギ,ブナ,イタヤカエデ,ミズナラの4種の調査木を選び,林床部・林冠通過部・土壌A_O層通過部と樹幹流との4種の位置での流下水を採取した。スギでは樹幹流部分が最もpHが低く,他の広葉樹3種では有為な差は認められなかった。 3 酸性雪(雨)による土壌への影響を検証するために,主として新潟県内の土壌(採取サンプル数113個)を採取し,それらの酸性化の程度と酸性溶液による溶出元素を検討した。その結果,酸性雪や雨による土壌への影響は,現段階では深刻ではないが,採取した113サンプル中の35%はすでに酸性化が進んでいる可能性が高いと判断された。 4 春先の最初の雪解け水中の水素イオン濃度が高いというアシッド・ショック現象が知られている。落下する新雪は大気中で酸性物質を吸着する。大地に積もった新雪は,圧縮され,溶解と再結晶を繰り返し,氷状のザラメ雪となる。この繰り返しで,硫酸,硝酸,塩化物イオンは粒状ザラメ雪の表面に濃縮される。実験室で硫酸イオンを含む溶液から球状結晶を生成し,それらを溶解し,この濃縮現象を説明した。
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