研究概要 |
平成7年度に計画された実験計画は概ね遂行され、予備的に行われた実験の裏付けおよび新たなる知見等を得た。明暗周期を12時間明、12時間暗(12L12D,計24時間で1周期)と6時間明、6時間暗(6L6D,計12時間で1周期)に設定した飼育室における明暗リズムの極端に速められた環境下では、化学発がん剤(Urethane)誘発によるマウスの肺腫瘍の大きさが自然周期下で飼育されたマウスより速く大きくなることが、ICRおよびA/Jマウス両系統で認められた。そして、肺臓器DNAの合成ピークが自然周期下では1日1回であるのに対して1日2回と合成周期が短くなることも観察された。更に、C3H/Heマウス系統においてもDiethylnitrosamine単回投与(0.02μg/g,i.p.)で誘発された肝癌の平均腫瘍直径が、6L6Dでは2.94mm、12L12Dでは1.99mmであり、マウスあたりの腫瘍発生率は投与後8カ月で6L6Dでは1.35、12L12Dでは0.15であり、明暗リズムの極端に速められた環境下で肺腫瘍の場合と同様に腫瘍の増殖促進が示唆される結果が得られた。がんの増殖には明暗周期の変化のみでも極端に変化すれば充分に影響することが判明した。これは、平成7年度の研究結果のなかでも特に評価し得るものである。また、飼育開始3ヶ月ですでに4日周期の性周期が乱れ、膣スメア検査で発情したような状態が継続していることがわかった。そのためか、12L12Dに比し6L6Dの方が単位時間当りの交配率が低下した。これらの結果から、明暗周期の変化のみでも長期間作用すると、生体のリズムが変わり生体に対して器質的な影響を充分に与え得るということが裏付けられた。そして、晩発性疾患の発症時期にも影響する可能性が示唆された。 今後は、腫瘍以外の晩発性疾患が、どのように影響されるかが焦点となる。また、実生活に則した生活リズムの乱れの基本的な生理機能、腫瘍および晩発性疾患等への影響に関しても、ヒトへの外挿のための研究として発展させなければならない。現在、自動行動観察装置を用いた。行動パターンの変化について、データを採取する準備にとりかかっている。
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