研究概要 |
培養ヒト白血病細胞Molt-4,HL-60およびU-937を実験に使用し,X線照射後のアポトーシスとDNA断片化を定量した.照射線量と時間経過を調べたところ,アポトーシス誘発の順はMolt-4>>HL-60>U-937となった.アポトーシス発現が高まる放射線照射6時間後に細胞内Ca^<2+>イオン濃度を蛍光画像解析装置により個々の細胞について測定したところ,特にMolt-4細胞においてに高い細胞内Ca^<2+>イオン濃度を示す細胞発現を認めた.細胞内へのCa^<2+>の取込みはMolt-4細胞において照射後経時的に増加したが,他細胞での増加はなかった.X線照射後,細胞内カルシウムイオンキレータであるBAPTA-AM(5μM)で6時間処理した時,アポトーシス発現率の約60%が抑制され,DNA断片化も抑制された.一方,細胞内Ca^<2+>イオン濃度を高めることが知られている温熱処理(44℃,30分)を実施すると,3種類の細胞とも同様に高い細胞内Ca^<2+>イオン濃度を示す細胞集団を認めた.アポトーシス誘発の順はMolt-4<HL-60=U-937であった.温熱処理によりDNA断片化が誘発されたが、BAPTA-AMを加えても抑制されなかった.以上の結果はMolt-4細胞における放射線誘発アポトーシスに特異的に細胞内Ca^<2+>イオンが部分的に関与していることを示した.放射線誘発DNA断片化は亜鉛イオンの添加で濃度依存性に抑制されることから,Ca^<2+>イオンがD Naseγと思われるエンドヌクレアーゼの活性化に関与していることが示唆される.一方,Molt-4細胞をスフィンゴミエリナーゼで処理するとヌクレオソーム単位のDNAラダーが形成されが,これにスフィンゴシン-1ーリン酸(SPP)を加えるとDNAラダー形成が抑制され、逆にスフィンゴシンキナーゼの阻害剤であるN,-N-ジメチルスフィンゴシン(DMS)を加えると促進された.同様に、SPPはMolt-4細胞におけるX線誘発DNAラダー形成を抑制したが、DMSは促進した.Molt-4細胞の放射線誘発アポトーシスにおいてセラミド経路も関与することを示した.
|