ヒト線維芽細胞に、20GyのX線を照射し、4時間後にRNAを抽出してRT-PCRを行うことによって、ヒトgadd45遺伝子のcDNAをpGEM-Tベクター上にクローニングした。次に、単離したgadd45遺伝子の発現制御を可能にするために、大腸菌のlac repressor-operatorシステムを利用した発現誘導型ベクター(pOPRSVICAT)にgadd45遺伝子をサブクローニングした。ベクター上のプロモーターに対して正方向のセンスgadd45と、逆方向のアンチセンスgadd45の2種類を得た。遺伝子受容細胞としては、SV40 virusで不死化した放射線高感受性AT5BIVA細胞及び対照としてGM638細胞を用いた。lac repressor-operatorシステムでは、トランスに働くrepressorが導入遺伝子の発現を抑制し、inducer(IPTG;isopropyl-β-D-thiogalacto side)の添加によって発現が誘導される。そこで最初に、lac repressor遺伝子を細胞に導入して、Western blotting法により恒常的にrepressorを発現する細胞を同定し、数個分離した。これらの細胞に、まずセンスgadd45を導入し、分離した細胞につき、培地に5mM IPTGを添加してGADD45の発現誘導を抗GADD45抗体を用いたWestern blotting法にて調べた。その結果、inducer添加により発現誘導の見られる細胞がAT5BIVA細胞で2個、及びGM638細胞で1個それぞれ得られた。従って、平成8年度以降、このシステムを用いて、放射線高感受性AT細胞におけるG_1チェックポイント機構を、GADD45発現量を人為的に変化させることによって調べるというアプローチが可能になった。
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