1.メチル水銀の無機化反応の組織、細胞内局在の検討 メチル水銀の無機化反応の部位(組織)の推定を行なうために、Wistar系雄性ラットに塩化メチル水銀(10μmol/kg)を静注し、1、3、6、9、および24時間後に生理食塩水で環流後、肝臓と腎臓を摘出し、各組織の総水銀と無機水銀濃度を測定した。その結果、メチル水銀がまず肝臓で無機水銀に変換され、その後、循環系を経由して腎臓へ移行することが示唆された。 そこで肝臓の切片を用いた無機化反応の検討を行なった。ラットにメチル水銀-システイン抱合体(10μmol/kg)を静注し、20分後に肝臓を摘出し、厚さ約0.5mmの切片を調整した。これらの切片をL-15倍地中で37℃、5%CO_2/95%O_2でインキュベートした。4時間後、各切片および倍地の総水銀と無機水銀濃度を測定した。その結果、4時間のインキュベーションの間に無機水銀レベルは2〜2.5%の値までほぼ直線的に増加したが、その後減少した。この無機水銀の生成速度はin vivoにおける速度に匹敵するものであった。以後培養時間を4時間に設定して、種々の条件下で検討した結果、この系でも無機化反応への活性酸素の関与が証明された。 2.メチル水銀の無機化速度の加齢変化の検討 BALB/cA系雄性マウス(9、20、40週齢)に塩化メチル水銀(10μmol/kg)を静注し、6時間後に生理的食塩水で還流後、肝臓と腎臓を摘出し、総水銀と無機水銀の濃度を測定した。その結果、肝臓の無機水銀の割合は週齢の増加と共に減少したが、腎臓の無機水銀の割合は週齢と共に増加した。このように加齢により無機化反応の速度が変化することが明かとなった。
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