今年度はイネに対するUV-Bの影響と感受性の基礎的な解析を行い、この結果を次年度(平成8年度)の研究に応用しようとするものである。本年度購入したCCDカメラはパソコンに接続し、ゲル電気泳動像を取り込んだ。これまで、目的のDNA損傷量を求めるための市販のソフトはなく、何度か改良の結果、新たに専用のソフトを開発することが出来た。これによりCCDカメラは十分に活用できることになった。 これまでの結果、紫外線をカットしたgrowth chamber(GC)および太陽光(紫外線および可視光)を十分受けた屋外で生育したイネの初期DNA損傷量は両者とも2-3CPD/Mbと低く、予想に反しほぼ同等であった。この点をさらに詳しく調べるため、両者にUV-Bを照射し、光回復および除去修復能を調べた結果、GCで生育したイネでは除去修復能が非常に低く、もっぱら光回復系DNA修復に使われていた。一方、屋外で生育したイネでは光回復および除去修復系も機能していた。従って、屋外で生育したイネの内因性のDNA損傷量がGCで生育したイネとほぼ同等に保たれるのは、これら修復機構が直ちに損傷を修復する結果、内因性のDNA損傷量は見かけ上GCで生育したイネと同様に低い値を示すことがわかった。 次いで、UV-B照射量と修復能の関係を検討したところ、(1)DNA損傷の度合いはUV-B量に依存していること、(2)DNA損傷の修復は損傷が小さい時(約10CPD/Mb以下)はほとんどが光修復機構で修復されること、(3)DNA損傷の修復は損傷が大きい時は、光修復と除去修復の両機構が使われること等が明らかになった。この結果は、対照に用いたアルファルファと比較すると、イネでは除去修復能の誘導がアルファルファに比べ弱く、専ら光回復が修復の主要な機構として働き、植物種により修復様式が異なることを示唆している。
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