本年度は、アガロースゲル電気泳動装置を使って、紫外線感受性と紫外線抵抗性のイネ2種を紫外線をカットしたファイトトロン(東北大、共同利用施設)用いてUV-Bを照射し、DNA損傷をCPD形成量として調べた。紫外線(UV-B)によるDNA損傷の度合いは両者とも同程度であった。しかしながら、形成されたDNA損傷の修復は、両者とも光回復および除去修復能とも備えているが、紫外線感受性株(Oryza sativa var.serjumki)は、紫外線抵抗性(Oryza sativa var.marithbachi sc-6)よりも修復能が弱く、光回復はUV-BでDNAが損傷を受けると直ちに反応して機能するのに反し、除去修復機能はゆっくり働くことが解った。これらの結果は、形成されたDNA損傷はまず初めに光回復機構で修復が行われ、それでも間に合わない場合に除去修復能が働き出すものと考えられる。この様なシステムは、DNA修復がまず外部の可視光線エネルギーでの光回復で行われ、損傷が多い場合には内部エネルギーをも使うという効率の良い方法で行われていることを示している。次いで、イネの各生育段階について、第1-2葉の時期、3-4葉の時期、5-6葉の時期の紫外線に対する感受性について、DNA損傷の度合い、光修復能と除去修復能などを調べた。この結果、1-4葉までの時期におけるイネのDNA損傷の度合ならびに修復能は、ほぼ同じであったが、5-6葉以後になるとDNA損傷の度合は2割ほど減少した。この理由は、この時期には葉緑体が増加や細胞の肥厚により核DNAに到達する紫外線量の減少が挙げられる。これらの結果、イネの紫外線抵抗性はDNA損傷の修復能力の高いものを示しており、今後日本で栽培されているイネの紫外線抵抗性を調べ、増加する紫外線に対する方法を早急に検討する必要がある。
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