本年度は、凍土中のメタンハイドレイトの生成・解離特性の測定のための圧力容器、温度・圧力の制御系、測定器のシステムを作成することに、重点をおいた。予備実験として、1)メタン-水-メタンハイドレイト系、2)メタン-水飽和した砂-メタンハイドレイト系での実験を行なった。1)の実験手順として、まず、圧力容器内に、水を入れて、その後、常温状態でメタンを5MPaの圧力で挿入し、その後試料の温度をメタンハイドレイト生成温度である0℃において、メタンハイドレイトの生成の様子を実体顕微鏡を通して、観察を行ない、ビデオに録画した。実験結果から、0℃では、過冷却のため、メタンハイドレイトの生成は観測されなかった。温度を-10℃に設定したところ、水試料は凍結した、その後、氷を融解させるため、試料を1℃の温度まで上げたところ、氷は融解したが、メタンハイドレイトは解離せず、生成されていることが観測された。以上の結果から、メタンハイドレイトの生成のためには、平衡温度より大きな冷却が必要であること、氷の形成が、メタンハイドレイト形成のトリガになりえることなどがわかった。この後、試料の温度を平衡温度より高くし、一度解離させ、再度温度を下げたところ、今度は0℃でもメタンハイドレイトの生成が観測され、生成・解離特性に温度履歴の影響のあることがわかった。そこで、実験装置を、試料中心部に銅線を接触し、その銅線の温度を試料全体の温度より下げることにより、メタンハイドレイト生成のためのきっかけとなる様、装置を改良し、実験を行なった。この実験では、予定したように、試料の中心部から凍結が進むのが観測された。2)の実験手順として、まず、圧力容器内に水で飽和した砂を入れて、その中心部に、冷却用銅線を接触させ、常温状態で、メタンを5MPaの圧力で挿入し、その後、試料の温度をメタンハイドレイト生成温度である-1℃において、メタンハイドレイトの生成を観察した。試料は中心部から、凍結するのが観測され、その際メタンハイドレイトも形成されるのが確認された。今後は、種々の圧力、温度条件で実験を行ない、メタンハイドレイトの生成・解離特性の測定を行なう予定である。
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